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【心臓の居場所TOUR】9/2(土)梅田QUATTRO−LBA LIVE PRESS−
  • 9/2(土)梅田QUATTROk
  • ライブレポーター:ムラヤマ さん
〜『心臓の居場所』循環の果てに広がる世界観〜

「心臓って何処にあったっけ」
日々の喧騒の中で僕らは、それがそこにあるものという常識のまま、確かめることも、そんな問いを思い浮かべることもなく、当たり前のものとして過ごす。
開場、柵の前に広がる音楽機器、そびえ立つマイクスタンド
日常において手放されることのない電子機器は、この非日常空間においてのみ休むことを許される。彼らの音をただただ待つ。
研ぎ澄まされた五感
ドクン、ドクン、
唯一休むことを知らないその音が、この時間が、僕らに『心臓の居場所』を再確認させる。

4人の登場、高まる鼓動。

アルバムでトリを飾る「未来」、
「君の涙を誰が笑えるだろうか」
爽快感満載の二曲を皮切りに、会場の鼓動は瞬く間にトップスピードとなる。

LEGO BIG MORLの曲の世界観にある「生」と「死」。
詞を書くタナカヒロキ(Gt.)には、これらを身近に感じさせる事故があった。
リハビリを乗り越え振り上げる彼の右手、ここCLUB "QUATTRO"(=4)に4人揃って立つことができる奇跡
「Wait?」
彼の書く詞が違和感なく僕らに流れ込んでくる理由の1つが、確かにそこにあった。

「worlds end traffic」久々の披露にイントロからあがる歓声。響く音と共にハイウェイを泳ぎ、僕らは1つになる。

しかし、音楽の神様は、彼らに対し順調なドライブを許すことはないようだ。この後、クアトロはある事故に見舞われることになる。

心臓の鼓動音をモチーフにした、アサカワヒロ(Dr.)のドラムイントロ。それと共に上昇して行くクアトロの心拍数。
ただひとり、ヒロキのギターのbeatだけが止まった「end-end」
中央を立ち位置とする彼の異変には誰もが気付くこととなる。
クアトロの意識が少しずつ、曲自体から彼の鳴らないギターに向き始める、そのとき、カナタタケヒロ(Vo.)が動く。いや、既に誰よりも早く動いていたのだ。いつもと変わらぬ美声を届けつつも、ギターソロ用に調整した自らのギター。それをヒロキに手渡すと、そのまま立ち位置を変えハンドマイクに、中央に立った彼は身振り大きく力強く歌い出す。
滅多に見ることのない姿のカナタ。それを真下で見る僕らの心臓の鼓動は、クアトロを揺らすほどの強い鼓動に。
そんな半径5mが伝染し、オーディエンスにまた笑顔が戻る。
前MCで、会場を揺らすよう煽った直後に走った動揺に、どこか気恥ずかしそうなヒロキ。
だが、そんな揺れもいい。それさえも心地よく、上手くハンドルを取るメンバー。
アンバランスさもバランスよく作り変えていく彼らには、11年目の力強さを感じた。

メンバーの絆を感じる音との戯れの時間は暫し続き、ヤマモトシンタロウ(Ba.)のクールなベースリフからこの物語は再開する。
日常的な情景に普遍的な問いかけを乗せた「真実の泉」
4人のアウトロセッションに自然と腕が上がる。背伸びを続ける僕ら。心地良さと同時に胸の内を熱くするこの音に、少しでも触れていたくて。

余韻に浸ることも束の間、虹色の照明が降り注ぐ「RAINBOW」
会場の鼓動はMaxに。彼らが奏でる色とりどりの曲を象徴する一曲を、ここでぶつけられる。僕らもそれに応える。柵に立つヒロキ。委ねられるマイク。細胞からそれに向かい叫ぶ僕ら。クアトロに虹がかかる。

続く「愛故に」そして「Hybrid」、右に左に習う暇なく大きく揺れ動くクアトロ。繰り返されるシンガロングと共に、僕らをソウゾウの向こうに連れ去っていく。

美しい歌詞と徐々に熱を帯びるサウンド、
名曲「バランス」はそれらが絶妙に掛け合わさった、広大で素晴らしき世界観を僕らに見せつける。歌詞に現る少年と少女は、このツアーアルバム『心臓の居場所』の世界観の住人として違和感なく存在し、自然な流れで、僕らをもう一度アルバム曲と引き合わせる。

あと3曲。終わりたくない。
ヒロキがそう呟く。会場の誰もが同じ気持ちを胸に抱いたまま、物語は最終章へ向かう。

透き通ったカナタの声に、「最終回は透明」の美しくも儚い歌詞が乗る。
永久にずっと廻るものだと思っていたこのライブにも、終点はある。頂上の絶景を僕らに見せてくれたこの観覧車も、次に乗る人と交代しなくてはいけない。この観覧車の良さをもっと、あらゆる人に知ってもらわなくてはいけないから。

今回のアルバムのリード曲として大切な役割を持つ「あなたがいればいいのに」
そして「美しい遺書」
生きる途中であなたと会えた。ヒロキがそう僕らを指差し、目で訴えかける。
彼らはこの場に証を突き刺すように、本編16曲を奏で終えた。

奥へ下がる4人、冷めやらぬ余韻、
アンコールを求める鼓動、その音に満たされるクアトロ。
「Rise and Set」
また会えるように昇って沈む彼ら
夜明けと日暮れ、動脈と静脈との対比が美しく、ここで決まる。

新曲「1秒のあいだ」の初演奏というサプライズに、クアトロの心拍数は最高潮に。
今までの彼らの洗練された馴染み深いサウンド、新しい彼らが織り成すサウンド、新旧混じ入る血肉の結晶に、僕らは確かに、胸の奥をそっと、ぎゅっと、掴まれる。

気付けば僕らはその「居場所」を教えられ、ツアーラストの曲に到達する。
振り返れば、アルバムのトリ曲「未来」で始まり、1つ前の曲「居場所」で終わる意味、このツアー自体が『心臓の居場所』として、ここまで循環してきたのだ。
循環を繰り返して行く過程でより馴染むサウンド、大きくなる世界観、いわば拡大版『心臓の居場所』ともいえるこの壮大なスケールに、終始圧倒されたまま、その幕は一旦、僕らの胸の中に収まり、そっと閉じられた。

本当の感動に触れたとき、心臓の鼓動は、こんなにも高鳴り、居場所を訴えかけてくれるものなのだと知った。
今夜のようなドラマみたいな結末を、僕らはまた、遠くない未来の彼らに期待してしまうのだろう。
積み上げてきた現在を過去という段にし、彼らはこれからも、この螺旋階段を登り続ける。

fin.