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LEGO BIG MORL『命短し挑めよ己』SPECIAL INTERVIEW

-“一秒のあいだ”以来、約半年ぶりの新曲リリースです。“命短し挑めよ己”のテーマは、どういうところから出てきたものですか?

カナタタケヒロ(Vo,Gt):基本的にヒロキの書く歌詞は、生命に関わることを、光や影を混ぜながら表していて。今回はその大きなテーマをより具体的に感じさせられるサウンドにしたい、というところから始まりました。

 

-タイトルも歌詞も、かなりストレートな言葉を選んでいますよね。

タナカヒロキ(Gt):「雰囲気に逃げない」ということはいつも意識していて。昔は「どうやって受け止めてもらってもいいです」と思って歌詞を書いていた時期もあったけど、12年もやってると、「責任を負う」ということにはブレたくないと思うようになったんですよね。今の時代、かっこいい雰囲気のバンドが増えているなか、LEGOとしてはどの流行とかシーンにも括られたくないし、俺らがそういうことをやる必要はないなと思う。で、デモを聴いたとき、こういうリズムのなかで、抽象的で雰囲気がかっこいい言葉を乗せるのは簡単なんですけど、ちゃんとメッセージのあるものにしたいなと思いすぎたら……こうなりました(笑)。
 

カナタ:ちょっと民族っぽい独特のリズムなんですよね。初めての感じなので「お客さんはライブでどう乗るんだろう?」みたいな話もしてるんですけど。今回新しく、涌井啓一さんというプロデューサーと作業することになって。同い歳ということもあって波長も合うし、サウンド面に関して「普通はおもんない」みたいな感じの人で(笑)、かなり厚いサウンドに仕上げることができました。

 

-ロックとアコースティックとデジタルが、同じくらいの主張のバランスで仕上がっている印象を受けました。

カナタ:最近はシンプルなフレーズを繰り返して昇華させていくような作り方をしていたんですけど、この曲は、それまでのLEGOのギターやベースの絡み合いの部分が見えていると思うんですよね。次のアルバムに向けた第一歩の曲になったと思います。

 

-この歌詞をヒロキさんから受け取ったとき、他のメンバーはどう感じましたか?

ヤマモトシンタロウ(Ba):僕としては、<命は短し挑めよ>というのが、30代でバンドをやっている自分たちにリンクしたというか。バンドってやっぱり、刹那感があると思うんですよ。いつ終わるかわからないし、制限時間があるかもしれないし。それに、こうやってプロとして作品を発表する以上、勝つ人と負ける人は絶対に出てくる。そういう意味で<命は短し挑めよ>というワンフレーズが印象的だったから、タイトルも「ここを押したほうがいいんじゃない?」って言って。
 

カナタ:全体的に、歌っていて感情が高ぶる言葉だなと思います。力強さと歯痒さが入り混じった葛藤もありますし。
 

ヒロキ:サビで「負けてます、僕ら」って言ってますからね(笑)。

 

-<今日勝つためだけに負け続けてきた>というのは、自分たちのこととして書いたラインですか?

ヒロキ:大きい意味で、まだ勝ったことない気がするんで、俺ら。10周年イヤーからずっと、勝つべく準備をしているつもりです。10年もバンドをやってたら、「このまま終わられへんな」って思いだしてきたというか。
 

カナタ:常に欲というものはあるじゃないですか、「もっと大きいところでライブをやりたい」「もっといい曲書きたい」「もっと上手くなりたい」とか。そういう気持ちを「負け続けている」と表現するのもありだなとは思います。

 

-じゃあ、歌詞にちなんだ聞き方をすると、LEGOにとっての<死ねない理由>というのは?

シンタロウ:意地かな。この年齢になると、やめていくバンドマンも結構いるわけじゃないですか。でも、やめたらその時点で終わるし、やめるのが一番ダサく感じてます。そうなると、今までの音楽人生を全否定しちゃう気持ちになっちゃいそうで嫌なんです。
 

カナタ:挑戦し続ける気持ちが消えない限り、このバンドは続いていくと思うし、まだまだ成長できると各々が思ってるはずやから。一生そう言うんやろうけど、だから一生やめられへんのやと思う。
 

ヒロキ:僕は、忘れらんねえよの梅津脱退ライブで、人生で初めてというくらい、悔いのない顔をしている男を見たんですよね。もし自分がLEGOをやめると考えたときに、あんなに悔いのない、ほんまの男の顔はまだできへんなと思う。その理由は、シンタロウが言ったみたいに「意地」だと思うんですけど。恩返しをしたいと思う人に返せてないし、中途半端でダサい理由でやめるのだけは、その人たちにも申し訳ないし。4人で好きなことができて、それを待ってくれてる人がいるのもほんまやから。うん、意地やな。見返す気持ちしかない。

 

 

-“命短し挑めよ己”がLEGOらしいなと思ったのは、単純なメッセージで終わらせず、一捻りさせてくるところで。「自分のために一生懸命生きろ」というメッセージだったら、正直、他のロックバンドでもありがちだと思うんですけど、「自分のために生きるのか、それとも誰かのために生きるのか。その2つのバランスは、どう在るのが幸せなのだろうか」という問いかけが含まれていますよね。

タナカ:それはほんまに……的を射ていただいていますね。
 

一同:(笑)。

 

-みなさん、どうですか? LEGOというバンドとして、30代の男として、自分の幸せを追求したときに「自分のため」と「誰かのため」をどういうバランスで捉えていますか?

ヒロキ:昔、なにかで読んだのが「一生ひとりでいるとか、自分のために生きるというのは、とても楽な生き方やから、そっちに逃げるな。自由を履き違えるな」という言葉で。それが頭にあって、この歌詞を書いたところもあるんです。
 

カナタ:俺、自分のためだけに生きるなんてめっちゃしんどいわ。おもんないやん。俺は「誰かのために」っていうのが大きいかな。
 

アサカワヒロ(Dr):僕も「人のため」のほうがいいですね。「自分のため」だと、あんまり達成感がないじゃないですか。「人のため」だったら、嬉しいとか楽しいっていう感情がそのまま手に取るようにわかるから、それがいいなと思う。
 

シンタロウ:音楽は、それが一番絶妙なところにあるよね。究極の自己満足を売ってるわけじゃないですか。でも、聴いてもらう人がいて成立するものだから。ただ、10年以上やってきて、「自分が幸せになるためにやってます」って言えるようにはなってきたなと思うんですよね。さっきの話にもつながりますけど、自分も幸せになりたいですし、お客さんもスタッフさんも含めて幸せにしたいし、まだそれが絶対的に叶ってるわけじゃないから「自分のため」と「誰かのため」に音楽はやめられない、みたいな感じですかね。

 

-「どう生きるのか」と「愛」を歌うという意味では、アルバム『心臓の居場所』があって、シングル“一秒のあいだ”があって、そして“命短し挑めよ己”がその集大成のような気もしたんですよね。

カナタ:そうなんですよね。だからあえて表ジャケットも『心臓の居場所』とリンク性があるような感じでお願いしたんです。『心臓の居場所』と地続きの世界観に浸ってほしいなって。

 

-裏ジャケットは会場先行販売で購入した人にしかわからないようになっているそうですが、2曲目“マイアシモト”と3曲目“バランス”をイメージしているんですよね?

カナタ:そう。ちょっとアコギの弦のパッケージみたいな感じになってます。

 

-“マイアシモト”と“バランス”はアコースティックバージョンで収録されていて、5月20日から始まるツアーは、ロック編成とアコースティック編成の2部構成になっています。そもそも今「アコースティック」を追究しようと思った理由は?

カナタ:3月に恵比寿LIQUIDROOMでやった結成12周年イベントのとき、ただいつも通りのライブをやるんじゃなく、ひとつ上のチャレンジをしたいということで、2日間あったうちの1日はアコースティックのワンマンをやったんです。それをやってみて、アレンジしてるときから楽しかったし、音圧だけではないところで勝負できるなとも思ったし、違う聴かせ方ができるなという自信もついて。

 

-「アコースティック」というと、音圧が薄くなるイメージがあるけれど、LEGOの場合まったくそうならない。むしろ、LEGOの底力であるアンサンブルの緻密さと技術の高さが際立つなと。

ヒロキ:アコースティックでやると骨細になりがちですからね。まあ、アコースティックを定期的にやってるバンドさんには負けるけど、俺たちの場合、曲が生きるからね(笑)。

 

 

 

-アコースティックって、歌も演奏も、ロック編成以上にごまかしが利かないですよね。

カナタ:アコースティックの日のほうが、倍くらい緊張しました(笑)。
 

ヒロキ:指ちぎれるかと思うくらい練習しましたよ(笑)。
 

アサカワ:本番中も手がボロボロになりました。カホンと、ジャンベと、電子パッドと、ドラムセットと、4つを使い分けていたので。手がめっちゃ痛かったです(笑)。

 

-そこまで大変な状態になってでも、手応えはあった?

ヒロキ:めちゃめちゃありましたね。「今日来た人を絶対に満足させられた」という自信しかなかったです。

 

-ライブで17曲披露したなかでも、今回“マイアシモト”と“バランス”をリリースしようと決めた理由は?

カナタ:この2曲は特に自信作で、実際にライブでやったときの反応もよくて。“マイアシモト”なんて「新曲やん!」っていうくらい原型がないですけど(笑)。“バランス”は、“Strike a Bell”(2015年リリース、9thシングル)のカップリングとして、このアレンジを当時シンタロウがやりたがってたんですよね。でも結局別の曲を収録することになって、ようやくこのタイミングで夢が叶ったわけなんです。

 

-“マイアシモト”は2009年、“バランス”は2010年の曲ですけど、今改めてそれらの曲と向き合うと、どういう感情が湧いてきますか?

シンタロウ:“マイアシモト”なんて、結成当初の曲ですからね。4人でスタジオに入ってアレンジしていったんですけど、当初のアレンジをしているような感覚でできたというか。
 

カナタ:「初心に戻る」みたいな感覚はすごく詰め込まれていますね。“バランス”は、自分たちが歳を重ねていくなかで、曲に追いついていく感覚があるんです。
 

タナカ:“バランス”は20代前半くらいに書いた曲で、当時は「こんなに大きい歌を20代前半のやつが歌っていいのだろうか」という不安があったんです。なので当時、大きなテーマの曲をいろいろ調べたりもしました。それで桜井さん(Mr.Children)が“Tomorrow never knows”を24歳で歌ってることを知って、「俺も大丈夫かな」と思って(笑)。でも「若造が大層なこと言うな」って自分でも思ってたから、最後に自分を救う意味でも<この歌には意味などないのかも>って書いたんですよね。

 

-LEGOが「死生観」や「生命」についてオリジナリティーと説得力を持って歌いだしたのって、2013年のヒロキさんの手の怪我と手術、それに伴う活動休止が境目だというイメージがあったんですけど、“バランス”を聴くと、そういった要素は結成当初からあったんだよなと気づかされました。

タナカ:そうですね。デビューシングル“Ray”のときからそういうことを歌ってるので、ブレてないんやなと思いますね。僕、「共感性」という言葉が嫌いで。歌詞って共感させるためのものじゃないと思ってるから。でも、誰もが普遍的に持っているテーマが「生死」の話かな、というふうに12年前から思ってるんですよね。「彼氏からの電話が」みたいな歌詞やと、ピンポイントの人にしか合わないじゃないですか(笑)。普遍的でありながらもオリジナリティーを出せるのは、「どう生きるか」とか「生死」というテーマだと思うので、そこはこれまでもブレずに書いてきたし、これからも書いていきたいなと思いますね。

 

-5月20日から始まるツアー『LEGO BIG MORL ~Acoustic & Rock~ TOUR 2018 月と太陽』では、この3曲が聴けるわけですよね。

ヒロキ:こんな濃い内容をやるツアー、初めてやなって思ってます。いつも不安のほうが大きいんですけど、今回はワクワクしかないです。この4人で意思疎通してひとつにしたものを表現するので、みんなは自由に踊ってください、というのがこのツアーの1番のトピックスかな。

 

-ロックとアコースティックは半々くらいな感じですか?

シンタロウ:そうですね。イメージとしては2部構成くらいの感じです。
 

ヒロキ:『月と太陽』って、いいツアータイトルにできたなと思ってます。「アコースティック」と「ロック」というのを表せているし、太陽があるから月も見えるという意味でも、アコースティックで骨組みがしっかりした曲を作れるからエレキで鳴らしても光るという意味付けができるし、お客さんと僕らもひとつですしね。
 

カナタ:東京は追加公演が決まりましたが、僕らにとって初ホールワンマンライブなんですよね。会場でCDも買えますが、先に配信で聴いて楽しみにしてもらえると嬉しいですね。


インタビュー・テキスト:矢島由佳子